イルゼは驚くべき役である。『山の巨人たち』以前に、このような女の役が書かれた戯曲はなかった。いわば「女ハムレット」であり、正気と狂気の境界を自在に往還するのだ。
対するコトローネは、「20世紀のプロスペロー」と呼ぶべき役である。20世紀ともなれば、外界のテンペスト(あらし)から自分の島を守るのが魔術の使い道なのだ。
ともに、どんな役者ならこの役が出来るっていうんだ!、と叫びたくなるほどに、台本が凄い。
イルゼとコトローネ、寺内亜矢子と牧野隆二。爆発するか超新星となるか。まあこのふたり、萎縮してブラックホールになることだけはなさそうだ。