文化庁・日本芸術文化振興会舞台芸術振興事業
平成11年度文化庁芸術祭参加作品

【日時】
  1999年
  10月25日(月)〜31日(日)
  19:30開演、
31日は13:30&18:30開演
【会場】
  Asahi スクエアA(東京・浅草)
東京都墨田区吾妻橋1-23-1
tel 03-5608-5391
【料金】
  前売=A席4,300円(指定席)、B席3,500円(自由席)
当日=A席4,500円(指定席)、B席3,800円(自由席)
※10月25日はプレビュー公演につきA席3,500円(全席指定)、B席2,800円(自由席)

 

 

■『メデイア』について
宮城 聰
 『王女メデイア』を読んでまず僕が(いやおそらく誰もが)ひっかかったのが、夫イアソンへの復讐として母親メデイアが子供を殺す、という部分でした。普通 に考えれば、子供が死んでいっそう痛めつけられるのは父親よりむしろ母親ではないでしょうか、まして母親みずから手を下したということになれば。
 ではなぜ「子殺し」が、(夫本人を殺す以上に!)夫への復讐になるとメデイアは考えたのか。
 そこでヒントになったのが、イアソンが「婿入り」するクレオン王家には男子がいず、クレオン王にとっては娘と結婚するイアソンが「跡取り」になる、という点でした。
 こうして僕が思い至ったのは、もしイアソンとメデイアの間に産まれた子供が女の子だったらメデイアは子供を殺さなかったのではないか、ということでした。
 つまりメデイアは「男から男へと家督が相続されていく」というシステムそのものへ復讐したのではないか。イアソンという男がこの「男性原理」の使いっ走りとなって自分(女)をゴミのように捨てようとしたとき、その「原理」自体を破壊しようとしたのではないでしょうか。  
 2500年前にギリシアで確立された「男性原理」による統治はやがて世界中に広まっていき、その結果 、千年紀を前に人類は地球という母の息の根を止めようとするところまで来てしまいました。もし人類が次の世紀にも生き延びていこうとするなら、この「母殺し」寸前の息子=男性原理による支配、をまず滅ぼさねばならないのでは?
 「母による息子殺し」は、息子が取り返しのつかない母殺しをしでかす直前の、痛切な「息子救済」なのです。

 

■あらすじ

 ギリシアの都市国家の王子イアソンは、王位を継ぐための条件としてアジアへの遠征を課され、巨大な軍艦を仕立てて海峡を渡り、小アジア半島の東・コルキスに向かった。
 コルキス王の娘メデイアはギリシアの美丈夫イアソンに心を奪われ、みずから父を裏切ってイアソンに力を貸し、イアソンを勝利に導いた。そして彼の軍艦に乗り込み、イアソンとともにギリシアに凱旋した。
 しかし叔父の悪意から故郷に住めなくなったイアソンとメデイアは、別 の都市国家に落ちのびる。二人のあいだには息子も生まれ、メデイアはここで平凡な一人の妻として貧しくも幸せに暮らしていた。
 だがイアソンのほうは、王族として生まれながら一介の落人として人生を終えてゆくことに耐えられず、この土地の王家の娘との婚姻を図る。ちょうど男の跡取りのいなかったこの土地の王は、イアソンと自分の一人娘との結婚を喜び、前妻メデイアが害をなさぬ ようにとメデイアの追放を決定する。
 夫に捨てられてひたすら泣き暮らしていたメデイアは、その上に所払いを命じられて絶望の淵に追い詰められる。しかしその究極の逆境でついに、彼女の体内に眠っていたアジアの血=巫女のパワーが目を覚ます。そしてこの上なく激しいメデイアの復讐が始まる。
 メデイアはこの土地の王とその娘を殺害する。さらにイアソンを敢えて殺さず、彼を苦しめるために自分の産んだイアソンの息子を殺す。
 たった1日のうちにすべてを失ったイアソンは呆然と立ち尽くすのみ。王女メデイアは息子の死体を抱えて悠然とこの地を去る。・・・・


【出演】
  speaker mover
メデイア 阿部一徳 美加理
イアソン 大高浩一 川相真紀子
クレオン 中野真希 吉田桂子
使  者 吉植荘一郎 中村優子
息  子 榊原有美  
乳  母 江口諒  

コ ロ ス 徳永崇・木下貴道・稲川光・阿部直樹・大内米治・ダンバラ照和・森戸貴之

女  中 寺内亜矢子・原田玖美子・本多麻紀・片岡佐知子・諏訪智美・野村佳世

演  奏 棚川寛子

 

【スタッフ】
構成・演出  宮城聰      
照明 大迫浩二 【大道具】
照明助手 岩崎美緒   (有) C-COM
空間 木津潤平 【小道具】
衣裳 高橋佳代   高津装飾美術株式会社
音響 AZTEC(水村良・千田友美恵) 【Ku Na'uka other members】
小道具 会田夏実   萩原ほたか・木野彩子
舞台監督 海老沢栄    
舞台助手 斉藤葉子、長谷川裕    
舞台監修 堀内真人    
宣伝美術 梶木一郎、野中春江    
制作 久我晴子    
 
Director's notes
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